山田 邦子さん
同じ病の“妹たち”へ。
ここをご覧になられている若年性乳がん患者の皆さん、大変なご経験をされましたね。
私は告知された当初、ガンに対して張り切りすぎてしまいました。“治すこと”に、とにかく集中して「私は治るんだ、治るんだ!頑張るんだ、頑張るんだ!」って。周りの人に対しても、過剰なまでに敏感になってしまい、怒りすぎてしまったり、はしゃぎすぎてしまったり…。あらゆることに集中しすぎ、仕事に復帰した際には仕事が出来る嬉しさのあまり、頑張りすぎてしまいました。その結果、現場で倒れてしまったんです。運ばれた病院で点滴を打っているとき、ああ、あらゆる事への向き合い方を考えないといけないのかな。そんな風に思いなおしたのは、治療を始めて2年目のこと。以来少しずつ、私も変わってきました。
元々明るい性格の私でも、当然今でも不安になります。そして、いや頑張ろう!と思い直す。そしてまた、不安になる。でも、頑張ろうと奮起する。こういう気持ちを繰り返しています。私はね、以前は本当に「泣くことが大嫌い」でした。でも、ガンを経験した今、辛いんだもの、泣いてもいいじゃない。と、涙がこぼれる自分を肯定できるように。一日泣いたら、一日笑いたいな。出来たら、笑っている日が一日でも多いといいな。そんな風に、自分自身にも心境も変わってきました。
よくテレビや映画など見かける、手術を終え「おめでとうございます!」と花束が用意され、労われ退院していく“ゴールを迎える”ようなシーン。ですが、ガンには「今日で終わりですよ。」ということがありません。私ももちろん、今日もホルモン治療の薬を飲んでいます。だからこそ“付き合い方”が大事になってきます。
わたしはかつて病気のことを公表しないでいたのですが、意図せず報道されてしまいました。友だちや周囲の人へ話すタイミングに悩んでいたところだったので、当初とても困惑しました。報道されたことでいい事もありましたが、周囲の方の私への対応に気持ちがついていかず、人との付き合い方を改めて考え直すきっかけにも。今まで仲のよかった人たちと、今までと変わらないお付き合いが出来ることもベターかもしれませんが、私たちも「新しい自分」になったのです。若いキャンサーの方のなかには病気をきっかけに転職される方や、人との別れを経験した方も多いと聞きます。それでも、これは「新しい自分」として胸を張れる経験。笑顔をなくすことは全くありません。
同じ思いを共有してくれる“人”の存在。本当にありがたいです。例えば、家族。私も主人がいます。具体的に何をしてくれるかではなくても、家の中で横になっている私を見て“あ、調子が悪いんだな”と、放っておいてくれること。それは“思いやり”だったりします。そして、手術などによるボディイメージの変化。これが気にならない女性はいないでしょう。私は罹患したとき、すぐ彼に“今後のこと”を相談しました。どうする?と。それでも彼は「俺は全然気にならないよ!」と、即答してくれました。嘘かもしれない。気を使ってくれたのかもしれない。でも、私は本当に嬉しかった。今、パートナーがいる方は、お相手とたくさんお話してみてください。そして今、特定のパートナーがいない方も、世の中“なかなか”な男性は結構います。そして、極論ね、おっぱいで恋愛するわけじゃないでしょ?最終的には人と人。笑顔を忘れず、必要以上に恐れないで。
早いうちから同じ病の仲間と想いを共有出来ること。これは治療の過程で“大きな喜び”になります。私もキャンサーの仲間がいることで、本当に治療中の励みになりました。発症数が比較的少ない若年性乳がん患者の皆さんが、家族や友人以外の「分かり合える仲間」に人生の早いタイミングで出会えることは、ある意味でラッキーだと思います。この出会いは、後々まで続く「財産」になりえます。いろんな人の意見がありますから、同じキャンサー同士でも意見が違う。これもまた当然のこと。それでも違いを恐れるのではなく、お互いから学び、支えあってください。
若いうちは人間としても、女性としてもまだまだ模索中。この病気をきっかけにご自身の“やりたいこと”“やるべきこと”が、ハッキリしてくると思います。早いうちにこの“気づき”を得れたことが、必ず人生の大きなものとなるはずです。大切なものは、笑顔。今すぐ笑えなくてもいいんです。そんなときは「決して一人じゃない」ということを、思い出してくださいね。私たちはもう、仲間なのですから。
(構成/松 さや香)